一般的に農業において、大規模な経営をしている農場のことをメガファームと呼びます。
これは酪農においても同様で、牛の頭数や生乳生産量などで定義されています。
本記事では、酪農におけるメガファーム・ギガファームの定義についてご紹介していきます。
酪農におけるメガファームとは
酪農では、一般的には年間生乳生産量が1,000トン以上で、分娩を経験している経産牛を100頭以上飼養している単独農場をメガファームと呼んでいます。
ただし、明確に定義されているわけではないため一部の酪農メディアによっては年間生乳生産量3,000トン、経産牛頭数300頭と定義している場合もあります。
1,000トンの牛乳というと、1,000mlの牛乳なら100万パックになります。
牛乳を毎日1パックずつ、100年間飲み続けても36,500本にしかならないので、その数が途方もないことが分かるかと思います。
農場は最新設備やシステムを使用
何百頭という牛を飼養しているメガファームになると搾乳だけでもかなりの時間を要します。
乳牛はミルクを搾ってあげないと病気になってしまう可能性が高くなるため、搾乳は欠かせない仕事のひとつ。
とは言え、ミルカーを使って1頭1頭順番に搾乳しているとそれだけで1日が終わってしまいます。
そのため、一度に多くの牛を絞れるようにパーラーを作り、効率よく搾乳をしています。
また牧場によって、ロータリーパーラーや搾乳ロボットを用いて作業をより効率化しているところもあります。
それでも、やらないといけないことは盛りだくさん。
牛の健康状態の管理から子牛の世話、妊娠している牛の分娩など、内容も多岐に渡ります。
機械でできる部分は効率化し、人でなければ難しい部分を役割分担を決めて取り組んでいます。
300頭以上の牛を飼育していれば毎日分娩や人工授精が発生するので、農場によっては獣医や家畜人工授精師など、専門家を雇って対応しているケースもあるようです。
ギガファームはメガファームの10倍の規模
酪農におけるギガファームは、年間生乳生産量が10,000トン以上、経営牛を1,000頭以上飼養している単独農場を言います。
内容的にはメガファームの発展系で、システム化された設備をフル活用し、たくさんの牛を飼育しています。
ギガファームレベルの巨大ファームになってくると、日本全国でもそれほど数は多くありません。
四国最大級のギガファーム将基酪農
将基酪農 鮎滝ファームは四国最大級の規模を誇る農場。
令和5年以降、飼養している牛の頭数はなんと1000頭を超えており、出荷乳量も10,000トン以上。
農場の規模としては最大の位置付けとなるギガファームにあたります。
スタッフは親牛チーム、子牛チーム、堆肥チームに分かれており、チームの中でも搾乳や分娩、保育、データ管理や体調の悪い牛の世話など、さまざまな業務を分担して行います。
また、生き物が相手なので前回うまくいったやり方が次も使えるとは限りません。
酪農の仕事を何年も続けていても未経験の出来事や新しい発見は出てくるため、情報共有をしながらみんなで力を合わせて取り組んでいます。
メガファームの経営形態
メガファームになるとかなり大規模になるため、さまざまな経営方法が見られます。
例えば下記4ケースもその一例です。
- 複数の酪農家による機械利用組合などが合併し、法人化したもの
- 肉用牛と乳牛の両方が結合した企業型の大規模酪農経営
- 酪農家が外部労働力の手を借りて大きく発展したもの
- 複数の酪農家が合併した酪農共同経営体
農場によってスタイルはさまざまですが、効率化や経営の安定をはかるための施策は欠かせません。
酪農の仕事に関することだけでなく、スタッフ教育や投資、経営計画などを外部に委託しているケースもあります。
酪農から発展するさまざまな産業
メガファームの規模になると、単純に牛の世話をして、牛乳や乳製品を作るだけでは成り立ちません。
そのため、さまざまな二次産業、三次産業として、総合的な価値を生み出しているケースがほとんどです。
例えば、牛乳や乳製品を作ることはもちろん、牛の堆肥を使って肥料を作ったり、乳牛だけでなく食肉牛を取り扱うのもそのひとつ。
他にも、牧場自体を観光地化して集客をはかったり、牧場の乳製品をブランド化して流通させ、付加価値を付けて販売したり、経営方法やスタイルは牧場によって大きく異なります。
酪農の労働改革
牛は毎日乳を出すため、搾乳をやめることはできません。
そのため、酪農の世界は長時間労働で休みが取りにくいというのが通例でした。
しかし、近年では働き方改革の動きも手伝って労働改革に取り組んでいる農場も目立ちます。
例えば、将基酪農のケースでは、1日の労働を交代制にし、早朝から仕事を開始しているスタッフは15時には仕事が終わるようにしています。
また、チームの誰がどの仕事についても対応できるようにすることで、交代しながら長期休暇がとれるようにしています。
中規模以上のメガファームやギガファームではほぼ母牛が毎日子供を産むため、一般的な企業のようにお盆と正月はお休みにするような働き方はできません。
ただ、経営的な農場が増えてきたことで、朝から晩まで、年中無休で働くような労働状況は改善されつつあります。
経営者は経験を積んだ酪農家
酪農の仕事はシステム化されつつあり、専門家に委託すれば経営自体は未経験でもできるように思えます。
ただ、メガファームやギガファームを実際に経営しているのは長年の経験を積んだ酪農家ばかり。
これには、AIやITなど、テクノロジーが進化を続けていても大事なところではプロの視点や技術、経験などが必要となってくることが理由に挙げられます。
乳製品をはじめ、乳が使用されている製品は多く、2014年のバター不足以降、国が酪農の規模拡大を求めてきた経緯があります。
新型コロナウィルスやロシアのウクライナ侵攻などの影響で始まった牛乳ショックも2024年現在では一定の収束を見せていることから、今後も酪農経営の大規模化は進んでいくと考えられています。
将基酪農も四国最大級の農場として、これからも安心安全な牛乳をお届けしていけるよう、スタッフ全員で取り組んでいきます。