酪農と畜産の違い、日本の畜産業や酪農業について解説します

酪農と畜産の違いは何?と聞かれて、正確に答えられますか?
なんとなく、畜産は牛や豚、鶏の食肉産業のイメージが強いかもしれません。
でも、酪農も牛を飼うため、いまいち分からなくなってしまいますよね?

牛を飼うのは畜産なの?酪農なの?
魚の養殖は畜産ではないの?
蜂を使った養蜂は畜産に入る?

などなど、考えれば考えるほど疑問に思えてきます。
そこで、今回は酪農の現場から畜産と酪農の違いについて詳しくご紹介します。
日本の畜産業や香川県内の酪農業についても触れていきますので、興味のある方は合わせて参考にしてください。

酪農と畜産の違い

まず、酪農と畜産の違いについてですが、実は酪農は畜産の一分野です。
「日本と東京って何が違うの?」と聞かれたらおそらく「東京は日本の一部だよ」と答えるでしょう。
これと同じように、畜産と酪農はまったく違うものではなく「酪農は畜産の一部」というのが正確な答えになります。
では、畜産とはどこまでの範囲を言うのか、また、酪農とは畜産の中のどういった分野を言うのか、その範囲について説明していきます。

畜産とは?

畜産とは、動物を飼育して、生活の一部にするための産業を言います。
家畜とは、家庭や農園で飼われる鳥獣であり、畜産は、鳥や獣を対象とした産業になります。
そのため、魚や貝の養殖は畜産とは呼びません。
また、動物を飼うこと自体を目的としたペット産業も畜産とは呼びません。
ただし、蜂を使ってハチミツを集める養蜂や、蚕を使って繭を取る養蚕は畜産の一部となっています。

日本の畜産でメインとなっているのは牛、豚、鶏の3種類。
食肉産業に加え、卵や乳、さらには衣類に使用される毛皮、ラーメンのエキスとなる骨など、動物を飼育して対価を得ている産業はすべて畜産に含まれます。
畜産業には、せっかく飼育した動物を、できる限り捨てることなく有効活用できるような仕組みが出来上がっています。

また、家畜を育てるにあたり、牛舎や鶏舎などを設置して決まった場所で飼育する定着型と、草や水などを求めて地域を旅する遊牧型があります。
土地の狭い日本で遊牧型の畜産を営んでいるところはなく、広い北海道であっても、エリアの決まった牧場内に家畜を放牧する、定着型の畜産を営んでいます。

酪農とは?酪農は畜産の一部

酪農とは、畜産の中でも家畜から乳を搾り、飲料や加工品として販売することを言います。
最も多いのは牛の乳ですが、山羊や羊の乳を使った製品も酪農に含まれます。

また、乳牛についても日本でではホルスタイン種が最も一般的ですが、ジャージー種、ブラウンスイス種の牛から搾乳している酪農家もいらっしゃいます。
加えて、酪農は生乳を搾るだけでなく、チーズやバター、ヨーグルト、生クリームなどの加工品を作って販売することも含まれます。

酪農と言えばやっぱり北海道

日本で最も畜産が盛んなエリアは北海道。
酪農においては日本の乳製品の50%以上が北海道で生産されており、日本の酪農を支えています。
特に、バターの生産量は他地域と比べても群を抜いており、なんと、国内の85%以上が北海道で生産されています。

畜産になると九州も盛ん

一方、食肉産業については九州地方が盛んで、肉用牛の飼育では、鹿児島県や宮崎県をはじめ、多くの県が全国でも上位の出荷量となっています。
乳用牛も肉用牛も、都道府県別に見ると北海道がダントツのトップですが、九州地方全体で見ると北海道を上回る飼養頭数になっています。
そのため、畜産の産出額の合計で見ると、都道府県別では北海道が圧倒的にトップですが、九州地方全体で合算すると北海道に並ぶ実績となっています。

四国地方の酪農は日本でも下位

四国地方は、気候や土地の特徴は九州地方と似ていますが、畜産業がそれほど盛んな地域ではありません。
乳用牛の頭数ランキングを見ると、香川県をはじめ、四国4県はいずれも25位以下になっています。

盛んではない=仕事が少ないと思われるかもしれませんが、意外にそんなことはありません。
酪農家は直接牛乳を作って販売して対価を得ているわけではなく、あくまでもおいしいミルクを作ることが仕事。
搾った生乳は生産団体を通して乳業メーカーに納品され、牛乳やチーズなどの製品となって店頭に並びます。
そのため、香川県で酪農が盛んでないからといって、酪農業が成り立たないことはありません。

酪農の需要って減っていないの?

牛乳の消費量は、年々減少傾向にあります。
そのため、需要が減っているように思われがちですが、乳製品全体で見ると、チーズや生クリームの消費量は増加しており、トータルでは決して下がっていません。
不景気などにも影響されにくいため、将来的に酪農業が大きく成長する可能性は低いかもしれませんが、逆に大きく衰退する可能性も低いと言えます。

牛にとっても人にとっても良い環境

牛は人に比べて体温が高く、やや寒い環境を好む生き物です。
そのため、酪農家は平野部に比べて気温の低い山間部で酪農業を営んでいることがほとんど。

冬の寒さは厳しいですが、北海道に比べると四国地方はかなり過ごしやすい地域です。
また、牛は暑さに弱いため、牛舎は風通しが良く、涼しい環境にしておく必要があります。
そのため、牛舎は夏でもある程度快適で過ごしやすい環境になっており、世話をする人間にとっても仕事のしやすい状態です。